完璧なExcelを作った。だから、お客様を困らせた。

「良いものを、できるだけ速く」

仕事では、
それが正しいと思っていました。

速く作る。
きれいに作る。
ちゃんと動くものを作る。

……当たり前ですよね。

むしろ。

それができなかったら、
仕事になりません。

だから私は、

「良いものを、できるだけ速く」

作りました。

結果。

お客様を困らせました。(笑)

今日は、
そんな話です。

先に言っておくと、
この記事で書きたいのは、

「お客様は嘘をつく」

という話ではありません。

私が今回、
いちばん学んだのは、

お客様が言ったことを、
そのまま受け取ってはいけないことがある。

ということでした。

言いたくないのではなく、

言えない。

自分でも、
うまく説明できない。

そんな事情を抱えていることもあります。

その「表に出てきた言葉」に、
こちらが100点満点で応えてしまうと。

なぜか。

お客様を困らせることがある。

……いや。

仕事って、
難しいですね。(笑)

外注する人にも。
外注を受ける人にも。

たぶん。

「あー、これあるな」

と思ってもらえる話です。

このまえ、
実際にあった話です。

あるお客様から、
こんな依頼をいただきました。

「エクセルで、業務効率化のツールを作ってほしい」

内容を聞いて、
すぐに思いました。

これ、プログラミングを使えば楽勝。

そして、速攻で作りました。

速い。
ちゃんと動く。
見た目もきれい。

自信、満々です。

「うん。これは良い。」

我ながら、
そう思っていました。

……たぶん。

ちょっとドヤ顔だったと思います。(笑)

ところが。

納品したとき、

お客様が、
困った顔をされたんです。

……え?

いや。

ちょっと待って。

自信あったのに。

「何か、まずかったでしょうか?」

そう聞くと。

お客様は、
少し言いにくそうに、
こう教えてくれました。

実は。

会社では、
製作者不明のプログラミングコードを
使ってはいけないこと。

上司にも会社にも内緒で、
こっそり依頼していたこと。

そして。

レベルの高いものが納品されると、
自分では上司に説明できない。

「これ、誰が作ったの?」

そう聞かれたとき、
答えられない。

すると。

「お前が作ったんちゃうんか?」

となる。

……そりゃ、困ります。

はっとしました。

私が受け取っていたのは、
「業務効率化のツールがほしい」

という依頼でした。

でも。

本当に欲しかったのは、

そこじゃなかったんです。

「自分が作ったと言える範囲のもので、

こっそりラクをしたい」

……これが、
本音だった。

依頼文に、
そんなこと書けませんよね。(笑)

ちょうどそのころ。

マーケティングの本を読んでいて、
こんな一文に出会いました。

「顧客は嘘をつく」

最初に読んだときは、

「いやいや。
そんなことないやろ。」

と思いました。

でも。

続きを読んで、
なるほどと思ったんです。

悪意があるわけではない。

無意識のうちに、
本音を隠してしまう。

理由は、
大きく3つある。

自分自身でも、
本音に気づいていない。

社会的に、
言いにくい。

そして。

矛盾や葛藤を、
抱えている。

……あ。

あのお客様、
これや。

読みながら、
あのときの困った顔を思い出しました。

まさにこれでした。

社内のルールを破って、
外部に依頼している。

そんなこと、
依頼文に書けるはずがありません。

そして。

気持ちの中には、
矛盾もありました。

ラクをしたい。
でも、目立ちたくない。

ツールは欲しい。
でも、良すぎると困る。

こんな要望、
フォームのどこにも書けません。

今回。

「仕事って、難しいな」

と思ったのは、
ここでした。

私は、手を抜いていません。

むしろ、
全力でした。

速く、
きれいに仕上げた。

普通なら、

「良い仕事ですね」

と言われる仕事です。

なのに。

お客様を困らせた。

……何それ
です。(笑)

建前に完璧に応えることが、
本音を裏切ることがある。

これ、
結構怖いなと思いました。

だって。

私、
実際にやってしまったので。

このあと。

私は、
コードを一切書かずに、

関数だけで、
作り直しました。

見た目も、
あえて素朴に。

「エクセルが少し得意な人が、
頑張って作りました」

くらいのものに。

技術的には、
明らかに後退です。(笑)

でも。

お客様の顔は、
そこでようやく晴れました。

こっちが、
この人にとっての正解だったんだ。

この一件から。

私は、
聞き方を変えました。

「何を作りましょうか?」

だけでは、
足りません。

その前に。

それを、

どこで使いますか?
誰が見ますか?
誰かに説明する必要はありますか?

社内で、
制約はありませんか?

こういうことを、
先に聞くようになりました。

正直。

聞く項目が増えました。

でも、
ここを飛ばして作ったものは、
たとえ完璧に動いても、
使ってもらえないことがある。

動くかどうかより、

その人が、使える状況にあるかどうか。

こっちのほうが、
大事だったりします。

……あの日、
お客様を困らせるまで、

あまり考えたことがありませんでした。




もし、
いま何かを外注しようとしている方がいたら。

ひとつだけ、
お伝えしたいです。

言いにくいことほど、
先に言ってしまったほうが早い。

社内で使えない技術がある。
上司には言えない。
あまり凝ったものだと困る。
予算が、実はあまりない。

そういう
ちょっと「かっこ悪い事情」ほど。

言ってもらったほうが、助かります。

なぜなら、
知らないまま制作すると、

わたしは全力で、

的外れなものを作るからです。

速く。
きれいに。
高品質に。

しかも、
めちゃくちゃ自信満々で。

……最悪です。(笑)

「良いものを、できるだけ速く」

もちろん。

それは、
これからも大切にします。

でも。

その前に。

この人は、本当は何に困っているんだろう?

まず、
そこを聞く。

作る技術より、

本音を聞く力のほうが、

たぶん、
大事です。

あの日。

「良い仕事をした」

と本気で思っていた僕を、

お客様の困った顔が、
見事に止めてくれました。

……仕事って、
奥が深いですね。(笑)


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